ぬりみさき手筋集
もっと流行ってほしい
-1 はじめに
この記事は、ニコリで誕生したパズル「ぬりみさき」の手筋集です。
ニコリ誌面での評判はともかく、ネット (Twitter) 上のパズル界ではそれなりに人気を博しており、またドイツのサイトに進出をするなど、今後の発展が期待されています。
また人気が広がる中で、ニコリではなかった (または、あまり認知されていなかった) 手筋も続々と見つかり、手筋の豊富さも今後に期待の持てる要因の一つです。
この記事では、そんなぬりみさきについて、手筋をまとめていきます。
なお、あくまで手筋集なので、具体的にどんなパズルかは実際に解いて掴んでもらえると幸いです。解くためのリンク集も最後にまとめています。
【追記】この手筋集では、ニコリ本誌で扱うような基本手筋を知っていることは仮定しています。そして、その先の手筋を知りたいという方向けです。あらかじめご了承ください。
0 ルール確認
まず、ぬりみさきのルールをおさらいしておきましょう (ニコリのサイトより引用)。
(i) 盤面のいくつかのマスを黒くぬりましょう。
(ii) タテヨコに隣り合うマスのうち1つだけが白マスで残りすべてが黒マス、という白マスのことを「岬」と呼びます。丸のマスは必ず岬になります。また、丸のないマスが岬になってはいけません。
(iii) 丸の中の数字は、丸のマスから白マスがある方向に、いくつ白マスが連続するかを表します。数字のない丸のマスでは、何マス連続するかはわかりません。
(iv) すべての白マスはタテヨコにひとつながりになっていなければなりません。
(v) 白マスも黒マスも、2×2以上のカタマリになってはいけません。
ぬりみさきはマスを塗るパズルです。また (iv) にあるとおり、残った白マスが連結します。
特徴的なのが (ii) で、つまり「みさき」=「袋小路」のマスがすべて明かされている、という点です。これまでのニコリ系であまりなかった「全表出」というのが、このパズルの特殊さのひとつかなと思います。
また (v) により黒マスにも白マスにも 2*2 禁があるため、塗り方に思った以上に制約がかかるともいえます。
1 基本的な考え方
大事なのは何と言っても「みさき」(丸) の理解でしょう。
ルールにある通り、丸と隣接する最大 4 方向のマスのうち、ちょうど 1 つだけが白マス、あとは黒マスになります。なので、(当たり前ですが) 丸と隣接するマスうち 1 つでも白マスとわかれば、他は黒マスになります。さらに、隣接 4 マスを 2 つずつペアにして考えることも多いです。すなわち、2 ペアのうちどちらか 1 つは両方黒マスになります。
一方で、みさきのマスがすべて分かっていることから、みさきでないマスにも大きな情報があります。すなわち「丸のない白マスでは、最大4方向のマスのうち、2 つ以上が白マスになる」ということです。このことから、たとえば 3 方向が黒マス (or 壁) のマスは白マスにはならず、黒マスにならざるを得ません。また、すでに白マスと分かっていて、隣接 4 マスのうち 2 方向が黒マス (or 壁) の場合、残りの方向は白マスになります。これらの原理をここでは「出口の原理」とよぶことにします。ヤジリンで出てくる考え方と似ているかもしれません。
これらの挙動と、黒マス白マス 2*2 禁の相性がよく、さまざまな形でマスの色が確定していきます。
2 局所手筋・数字なしver.
ヒントおよび、すでに白黒の確定したマスの周辺で起こる手筋について見ていきます。
2-1 禁止形「カップの手筋」「N の手筋」「T の手筋」
黒マスのあつまりで、なってはいけない形として典型的なものがあるので、触れておきます。
まずはカップ形です。これは 2 パターンあって、図のような形にはなりません。
左がダメなのは、出口の原理と黒 2*2 禁よりわかります。また右がダメなのは、くぼみの中が黒とすると左と同じになり、中が白でも出口の原理から白 2*2 禁に反します。
次に N 形、T 形です。それぞれ図の形にはなりません。
さてこれらの禁止形は、 実践的には
「禁止形の一部が現れたので、残りが全部黒にならない」
という形式で使うことになります。適用例を図示しておきます。
特に、丸が「二間トビ」「大ゲイマ」の位置にあると、大カップの手筋および N の手筋が適用しやすくなります。
さらに、壁・角があると多用な禁止形が生まれます。カップ、N, T の一部になっているものや、その亜種が出てきてしまいます。図はその一例ですが、この他にも禁止形はたくさんあります。
なお、禁止形の中に丸が入っていると、盤面として成立する可能性があって使えないので、注意が必要です。
2-2 くぼみの手筋
次はくぼみの手筋についてです。これは図のような形で「くぼみ」と白マスがあると、くぼみのマスが黒くなります。
なお、くぼみは壁を利用しても構いません。
理由は、くぼみのマスが白だと、出口の原理から白マスが伸び、白 2*2 禁に反するためです。
なお白マスは丸でも構いません。というか、丸の場合によく見かけます。
2-3 封鎖の手筋
出口の原理で 3 方向黒の場合は、見方を変えれば次のような形が禁止形と思うこともできます。
これと丸を利用し、黒マスが決まるパターンがあります。
これも同様に、壁を使ったパターンも考えられます。
2-4 さまざまな応用
上にあげたのが局所手筋の基本ですが、実際にはこれらを組み合わせて様々な手筋が発見されています。例を挙げるときりがないため、過去話題になった1つだけ触れておきます。理由もぜひ考えてみてください。
3 局所手筋・数字ありver.
3-1 基本
ここまで、ルール (iii) に触れていませんでした。このルールは「丸の数字がその丸から伸びる白マスの長さを表す」というもので、今まで述べた手筋と系統の違う決まり方を見せます。基本は、白マスを伸ばす方向が分かればその方向にちゃんとその数だけ伸ばすこと、そもそも長さ的に伸びるかどうか判定すること、などでしょうか。
3-2 応用
今まで述べた手筋と組み合わせると、なかなか不思議な挙動がおきます。これについてはすでに有益なまとめが存在するので、それを置いて終わりにしておきます (手抜き)。
以下、薄廻さんによるまとめです。
https://twitter.com/mizuusumi/status/1149893480669335552
https://twitter.com/mizuusumi/status/1149893876729049088
4 連結
ルール (iv) についてもくわしく触れていませんでした。いわゆる白マス連結=白マス分断禁です。これにより、ぬりかべやへやわけのような白マス確定がおきます。なお、白マスのみで繋がるかどうかを意識すると見つけやすいです (つまり、丸も邪魔者と思う)。
どういう形で現れるかは問題によるので、ここでは省略しますが、分かりやすいパターンのみ触れておきます。
また、丸による「いずれにせよ」=「アース(接地)」もあります。
対面のペアが使える場合もあります
5 仮定とチェイン
ここからはさらなる発展です。
上で見た手筋の他にも、丸の配置によって不思議な決まり方をするものが多く、手筋の形で体系化できていないパターンもまだたくさんあるでしょう。
手筋が見つからないときは、仮置きをして探っていくことになります。その際は丸が密集していたり、カップの手筋や N の手筋で連鎖させることで大きく進む場所を仮置きするのがコツです。1つの丸について「隣接 4 マスによるナナメ 2 ペアのうち、どちらかが両方黒」と仮定するとうまくいきやすい印象です。しかし、配置や数字によっては不思議な矛盾・確定の仕方がある場合も考えられるので、いろいろ試してみるのも大事です。
また、「チェイン」=「いずれにしても」で超えられるケースもあります。ざっくり言えば仮置きの連鎖なのですが、チェインの概念を使えばわかりやすく解き切れることもあります。チェインの詳細は以前書いた記事 (数独用/他パズルに応用可) に任せるとして、ぬりみさきでの応用についてまとめます。
先ほどと同様、白丸に隣接する 4 マスをナナメの 2 個ずつにペアにするのが基礎で、「ペアの両方が黒マスになる」という命題でチェインを引いていきます。白丸を挟むペアについては、ちょうど強チェイン (+弱チェイン) になっています。そして、禁止形で述べたカップの定理・N の定理により、別のペアと弱チェインが構成されます。それにより長いチェインが引ける場合があります。
具体例です。
いずれも偶数チェインのため二択が残りますが、それでも大きな進展といえるでしょう。
また、奇数チェインを仕込むこともでき、そちらではいきなり黒マスが確定します。実際、以下の問題でチェインが仕組まれています。ネタバレになるので、ネタバレが嫌なひとはスルーしてください。
http://puzsq.sakura.ne.jp/main/puzzle_play.php?pid=2095
http://puzsq.sakura.ne.jp/main/puzzle_play.php?pid=2584
http://puzsq.sakura.ne.jp/main/puzzle_play.php?pid=2586
6 変種
おまけとして、ぬりみさきの変種についても述べておきたいのですが、これは気が向いたら更新したいと思います。
7 おわりに
いかかでしたか。ぬりみさきの奥深い世界は感じられたでしょうか。
ぬりみさきについては、手筋の発見を含めまだまだ発展途上かなという印象があります。それは一方で、さらに深い魅力を秘めているともいえます。この記事を読んだ皆さんが、よりぬりみさきに親しくなり、広まっていくことを願っています。
なお、興味のある方は、以下のサイト (Puzzle Square) でたくさん遊ぶことができます。中には大変な問題もたくさんあるので、まずは簡単な問題から実際に触ってみることをおススメします。
http://puzsq.sakura.ne.jp/main/index.php?puzzle=47
また、「もう少し簡単なのがいい!」「しかも無限に遊びたい!」という人には、次の「ぬりみさきガチャ」がおススメ。みゃーみゃさんによる自動生成問題ですが、なかなか高水準で楽しいです。手筋を覚える前に、ここで体を慣らすのもいいかもしれません。(名前が数独ガチャとなっていますが、ガチャを選択すればぬりみさきが出てきます。)
https://myamyasdvx.herokuapp.com/sudoku.html
また、もっと慣れたい!早く解きたい!という方には、僕が実際にぬりみさきを解いた配信のアーカイブがあるので、それも参考になるかもしれません。
その他、感想や手筋の発見、ミスの指摘など、なにかありましたら気軽にコメントください。この記事は今後もちょくちょく追記すると思われます。
それではみなさん、よきぬりみさきライフを...