あんまり役に立たない数独講座

この記事はペンシルパズル Advent Calender 2018用に書いたものです。

adventar.org

 

みなさん、こんにちは。SP1といいます。

普段はパズルの早解きをしたり、作問をしたり、手筋考察をしたり、いろいろなことをしています。

今回は数独ナンプレについてお話したいと思います。

 

数独だけの本が多数出版されたり、新聞に掲載されたりと、すっかり世の中に定着した感のある数独ですが、 ニコリのものに限って言えば、使う手筋は限られています。具体的には次の通りです:

 

・1つの数字をみて、ブロックや列に1か所しか入らないもの。ニコリでは「ブロッケン」と「レッツミー」。

・あるマスを見て、入る数字が1通りになるもの。ニコリでは「マスミ」。

・1つの数字の位置がブロック内で固定され、列に利いてくるもの。ニコリでは「いずれにしても理論」。

・複数の数字について、場所が確定するもの。ニコリでは「予約」。

・1つの数字の位置固定の応用として、2列を考えるもの。ニコリでは「井桁理論」

 

列挙してみると意外と少ないように思えますが、なかなかどうして、これらの組み合わせによって、たくさんの良問が生み出されるのです。

 

しかし、たくさん解いていると、もっといろんな手筋を知りたい!使いたい!となるのが人間の性。実際、数独には上で挙げたもの以外にもたくさんの手筋があるのです!しかも、その中には「井桁理論」くらいの強力さ・見つけやすさ・汎用性を持ったものも存在します。

 

というわけで、個人的に「これは使える」と思った手筋4つ (+α) をランキング形式で紹介します。

 

そういえば、ついにパズル早解きシーズンの開幕ですね。

citizen-puzzle.hatenablog.com

詳細はこちら。みなさんもぜひ参加しましょう!

もしかしたら、今回紹介する手筋も少しだけ役に立つかもしれません。

 (実際、最近のコンテストで使う問題もあったとかなかったとか。。。)

 

以下こんな感じで説明をします。図は井桁理論を表したものです。

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左はある数字の縦の候補を表したもので、黄緑はありえるマス、黄色は入らないマスを表します。右は手筋を適応した結果を表していて、赤のマスでその数字が消えることを意味します。

 

第四位 ソードフィッシュ

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第四位は、井桁理論の応用です。

もともとは2列で考えていましたが、列を増やしても同じことが言えます。図のように3列にしたものをソードフィッシュとよびます。日本語ではメカジキですね。

図ではソードフィッシュが決まり、赤色のマスに考えている数字が入らないことがわかります

列が増えた分、難易度がアップしていますが、決まったときのキレイさ・爽快さもアップしているように思います。

なお、4列のものはゼリーフィッシュとよびます。こっちは日本語でクラゲですね。

 (追記) このソードフィッシュとゼリーフィッシュは、ニコリの数独でも登場するようです。主に超激辛でしょうか。本当に困ったら探してみるといいかも?

 

第三位 スカイスクレーパー

井桁理論もソードフィッシュも、1つの数字に注目する手筋でした。第三位も同様に、1つの数字に注目するものです。

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左図では、2列について候補の場所が二択になっており、下の行が一致しています。この図はなんとなく、2本のビルがそびえたっているようにも見えます。土台 (下の行) の上に高さの違うビルの天井 (上の行)、と覚えましょ。

このとき、この数字の入る場所を考えると、土台の方には1個までしか入らないので、天井の2マスのどちらかには入ります。したがって右図のように、天井の両方に利く赤色のマスは候補から外せます。この手筋をスカイスクレイパー (摩天楼!) とよびます。

「高さが異なる」というのがミソで、高さが同じだと井桁理論になります。井桁理論の亜種ともいえますが、高さが異なるのも許容した分、汎用性も上がっています。

 

第二位 XYウィング

予約や「いずれにしても理論」が進むと、1つのマスの数字の候補が減っていきます。

特に、1マスに2個だけ候補がある状態が増えると、今から紹介するXYウィングが決まりやすくなります。

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図の黄緑・水色・桃色のマスに注目してください。これらのマスの候補がそれぞれ1と2、2と3、3と1になったとします。このとき、赤色のマスすべてで1が入りません。

なぜなのかは、水色のマスの二択を考えるとわかります。水色のマスに2が入ると、黄緑のマスに1が入ります。一方、水色のマスに3が入ると、桃色のマスに1が入ります。よって、スカイスクレーパーの時のように、黄緑のマスと桃色のマスの両方に利いている赤色のマスに1が入らない、とわかります。

この手筋は、黄緑と水色、水色と桃色がそれぞれ同じ列かブロックにあれば成立します。左のようにたくさん消せるパターンもあれば、右のように遠く離れているパターンもあります。

少々複雑ですが、候補の減った後半にかなり有効と言えます。

 

番外編 ユニークネス

1位の紹介の前に寄り道をして、ペンシルパズル界の秘境、ユニークネスについて触れておきます。

ほとんどのペンシルパズルでは、答えがただ一通りであることが保証されています (このことをユニークネスとよびます)。すると、それを利用した議論ができてしまうのです。

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数独でよくあるのが図のような4マス入れ替えです。黄緑の4マスで1と2を入れ替えて2つの答えが出てくるため、解きあがりの盤面としてありえないことが分かります。

この原理を利用したものが次の図です。

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左図で、黄緑のマスが1,2の二択、水色と桃色が1,2,3の三択とします。このとき、4マス入れ替えを考慮すると、桃色のマスに1と2が入ることはあり得ません。よって桃色のマスは3と決まってしまうのです。

 

さて、こうしたユニークネスの議論は、基本的に作者側が意図して盛り込めません (作者は答えを一通りにする義務があり、答えが一通りであることを前提にできない)。したがって、作者の意図する議論の道筋から外れたものになってしまいます。

こーいうのは卑怯だと回避する人もいます。ただ解き手としては、こういう手筋も使えるようになった方が議論の幅が広がっていいのではないか、と個人的に思います。たとえば、今回紹介したものは終盤に埋める作業のショートカットとして重宝します。さらに、これ以外にも唯一性の議論のパターンはたくさんあるので、興味がある方は探ってみるとよいでしょう。

 

第一位 Wウィング

本筋に戻りましょう。いよいよ第一位です。スカイスクレーパーは位置の二択、XYウィングは候補の二択を連鎖させましたが、第一位はそのハイブリッドになっています。

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図では、黄緑の2マスが同じ行について1の位置の二択、水色の2マスが1と2の候補の二択になっています。また黄緑のマスと水色のマスがそれぞれ同じ列 (またはブロック) にあります。このとき、黄緑のマスのどちらに1が入っても、対応する水色のマスに2が入ります。よって、水色の2マス両方に利く赤色のマスに2が入らないことになります。これをWウィングとよびます。

Wウィングは見た目以上にかなり汎用性の高い手筋です。位置の二択も候補の二択もそれなりに発生する、中盤以降で猛威を振るうことでしょう。

 

 

 

いかかだったでしょうか。今回紹介した手筋は、どれも癖がありますがそれなりに見つけやすく、さらにそこそこ強力だと思います。ニコリの問題でも (意図した議論ではないですが) たまに使えます。

今回紹介した手筋が意図して盛り込まれるようになれば、数独の世界はさらに奥深くなると思います。そんな世界も見てみたいなぁ。

 

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。それでは、よき数独ライフを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

反省会

紹介したのはいいものの、ぶっちゃけマニアの人ならもう知ってる内容だと思います。ニコリの方もおそらく認知した上で手筋をしぼっているのでしょう。というか、ニコリでは数独に限らず、いろんなパズルについて手筋を絞った上で掲載しているはずです。それは「サクサク解けて快感」というのを重視しているからだろうし、大衆向けにしたいからだろうし、手筋を絞ってもその組み合わせ次第で十分面白くなるからだろうし、合理的な理由しか出てきません。数独だと、むしろ今ある手筋でも多いくらいです。というのも、予約のさせ方のパターンが大量にあって探すのに苦労するので、それで十分お腹いっぱいになってしまうのです。そこにXY-WingだのW-Wingだのを追加すると、探索時間が圧倒的に伸びてしまうのは明白です。そんなのを望む人は少ないでしょう。

ただ、ニコリ様は上級者向けのものも出版されています。最近だと超激辛数独なんてものもできました。せっかく超難問を謳うなら、超激辛だけでも少し手筋を増やしてみる、というのはどーでしょうか、いや、やっぱないか。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全然刺激が足りんぞ?というあなたへ。全然役に立たない編も書いてみた。

https://sp1-puzzle.hatenadiary.jp/entry/2018/12/19/074648