へやわけにおいて、四方壁のMX値は正方形盤面のみ確定していた (i.e., 黒マスの上限と具体的構成が求められていた)。
今回は、一般のケースについて四方壁のMX値を確定する。
これまでの結果:
黒マス最密充填のはなし - SP1のぱずるにっき (hatenadiary.jp)
参考:
超超へやわけMX - にしなん記録室 (scrapbox.io)
Teal's Mini Heyawake Guide :)) - Google ドキュメント
【へやわけ】角5x48に黒マスが87個しか入らないこと - SP1のぱずるにっき
特殊なケース
辺の長さが $7$ 以下のとき、ペナルティの議論で得られる上界がMX値にならない場合がある。それらを特殊ケースとして処理する。
ケースS-1:$1\times L$
$L=1$ のときMX値は $1$, $L\geq 2$ のときMX値が $2$ であることが容易にわかる。
ケースS-2:$2\times L$
$2\times 2$ の領域に黒マスが $2$ 個入らないことに注意すると、MX値が $\lceil L/2 \rceil$ であるとわかる。
構成は容易 (略)。
ケースS-3:$3\times L$
$3\times 2$ の領域に黒マスが $3$ 個入らないことに注意すると、MX値が $2\cdot \lceil L/2 \rceil$ であるとわかる。
構成は容易 (略)。
ケースS-4:$4\times L$
$L=1, 2$ のとき、MX値はそれぞれ $2$, $2$ である。
以下 $L\geq 3$ とする。
盤面全体のペナルティ許容値は $3L+1 + 2 \cdot \lceil L/2 \rceil$ である。
盤面を上下 $2$ 行ずつに分け、それぞれに入る黒マスの個数を $C_1$, $C_2$ とおく。
なお $C_1 + C_2$ としてありうる最大が MX 値である。
また最も上の行・最も下の行に入る黒マスの個数を $r_1$, $r_2$ とおく。
このとき Tobo Theorem により、以下の式が成り立つ:
- $r_1 \leq L - C_1 +1$
- $r_2 \leq L - C_2 +1$
最も上の行・最も下の行に入る黒マスの個数が少ないとペナルティのロスが生まれるが、その値はそれぞれ $\lceil L/2 \rceil -r_1$, $\lceil L/2 \rceil -r_2$ となる。
したがって、上記のペナルティを評価して以下の式を得る:
$4(C_1 + C_2) \leq 5L+3$
この式から MX値の上限が以下のように求まり、また以下に示す構成でこれらがMX値であることがわかる。
$L$ | $C_1+C_2$ の上限 |
---|---|
$4m$ | $5m$ |
$4m+1$ | $5m+2$ |
$4m+2$ | $5m+3$ |
$4m+3$ | $5m+4$ |
ケースS-5:$5\times L$
$L=1, 2$ のとき、MX値はそれぞれ $2, 3$ である。
以下 $L\geq 3$ とする。
盤面全体のペナルティ許容値は $4L+2 + 2 \cdot \lceil L/2 \rceil$ である。
盤面を上 $2$ 行・中央 $1$ 行・下 $2$ 行と分け、それぞれに入る黒マスの個数を $C_1$, $X$, $C_2$ とおく。
なお $C_1 + C_2 + X$ としてありうる最大が MX 値である。
また最も上の行・最も下の行に入る黒マスの個数を $r_1$, $r_2$ とおく。
このとき Tobo Theorem により、以下の式が成り立つ:
- $r_1 \leq L - C_1 +1$
- $r_2 \leq L - C_2 +1$
最も上の行・最も下の行に入る黒マスの個数が少ないとペナルティのロスが生まれるが、その値はそれぞれ $\lceil L/2 \rceil -r_1$, $\lceil L/2 \rceil -r_2$ となる。
したがって、上記のペナルティを評価して以下の式を得る:
$4(C_1 + C_2 + X) \leq 6L+4 + X$
加えて、$X\leq \lceil L/2 \rceil$ と評価できる。
以上より MX値の上限が以下のように求まり、またこれらは上下壁の $13$ in $5\times 7$ を並べることで構成可能なため、MX値となる。
$L$ | $C_1+C_2+X$ の上限 |
---|---|
$8m$ | $13m+1$ |
$8m+1$ | $13m+2$ |
$8m+2$ | $13m+4$ |
$8m+3$ | $13m+6$ |
$8m+4$ | $13m+7$ |
$8m+5$ | $13m+9$ |
$8m+6$ | $13m+10$ |
$8m+7$ | $13m+12$ |
くりかえし:
ベースケースは省略。
ケースS-6:$6\times L$
$L=1, 2$ のとき、MX値はそれぞれ $2, 3$ である。
以下 $L\geq 3$ とする。
盤面全体のペナルティ許容値は、$L$ が奇数のとき $6L+2$, $L$ が偶数のとき $6L+1$ である。
よってMX値の上界は $2L$ である。
また以下のように構成できるため、MX値そのものとなる。
ケースS-7:$7\times L$
$L=1, 2, 3, 4$ のとき、MX値はそれぞれ $2, 4, 8, 9$ である。
以下 $L\geq 5$ とする。
盤面全体のペナルティ許容値は $6L+2 + 2 \cdot \lceil L/2 \rceil$ である。
盤面を上 $2$ 行・中央 $3$ 行・下 $2$ 行と分け、それぞれに入る黒マスの個数を $C_1$, $X$, $C_2$ とおく。
なお $C_1 + C_2 + X$ としてありうる最大が MX 値である。
また最も上の行・最も下の行に入る黒マスの個数を $r_1$, $r_2$ とおく。
このとき Tobo Theorem により、以下の式が成り立つ:
- $r_1 \leq L - C_1 +1$
- $r_2 \leq L - C_2 +1$
最も上の行・最も下の行に入る黒マスの個数が少ないとペナルティのロスが生まれるが、その値はそれぞれ $\lceil L/2 \rceil -r_1$, $\lceil L/2 \rceil -r_2$ となる。
したがって、上記のペナルティを評価して以下の式を得る:
$4(C_1 + C_2 + X) \leq 8L+4 + X$
加えて、$X$ は以下のように評価できる:
- $L=4k$ のとき、$X\leq 5k$
- $L=4k+1$ のとき、$X\leq 5k+1$
- $L=4k+2$ のとき、$X\leq 5k+2$
- $L=4k+3$ のとき、$X\leq 5k+4$
以上より MX値の上限が求まる。ほとんどのケースでその上限がMX値そのものとなるが、$L=16m$ の場合のみ実現できずひとつ減る。以下でそのことを示す。
なお、構成は上下壁の $37$ in $7\times 15$ を並べることで可能である。
$L$ | $8L+4+X$ の上界 | MX値 |
---|---|---|
$16m$ | $148m+4$ | $\mathbf{37m}$ |
$16m+1$ | $148m+13$ | $37m+3$ |
$16m+2$ | $148m+22$ | $37m+5$ |
$16m+3$ | $148m+32$ | $37m+8$ |
$16m+4$ | $148m+41$ | $37m+10$ |
$16m+5$ | $148m+50$ | $37m+12$ |
$16m+6$ | $148m+59$ | $37m+14$ |
$16m+7$ | $148m+69$ | $37m+17$ |
$16m+8$ | $148m+78$ | $37m+19$ |
$16m+9$ | $148m+87$ | $37m+21$ |
$16m+10$ | $148m+96$ | $37m+24$ |
$16m+11$ | $148m+106$ | $37m+26$ |
$16m+12$ | $148m+115$ | $37m+28$ |
$16m+13$ | $148m+124$ | $37m+31$ |
$16m+14$ | $148m+133$ | $37m+33$ |
$16m+15$ | $148m+143$ | $37m+35$ |
くりかえし:
ベースケース:
ケースS-7':$7\times L$ で $L=16m$ のとき
$37m+1$ 個の黒マスが入らないことを示す。
これは上で示したMX値の上限の評価における等号のケースだが、これが成り立つには $X = 20m$ で、かつ上辺・下辺以外でペナルティのロスが起きてはいけない。
このとき、中央 $3$ 行を $2$ 列ずつで分割すると、その両端のうちどちらかは $3$ 個入らないといけないとわかる (空中 $3\times 4$ に黒マスが $6$ 個入らないため、両端以外で $20m-5$ 個までしか入らない)。
すると、 $3$ 個入れる方で辺にペナルティのロスが起こってしまう。
したがって等号は成立しない。
$37m$ 個入れる構成は上記の通り。
一般のケース
ここからは一般の盤面 $m\times n$ について考える。
なお、上で幅が小さい場合は解決したため、$ m $, $n$ はともに $8$ 以上としてよい。
盤面全体でのペナルティ許容値は、ループが $ (m - 1)(n-1) $ , 辺で $2 (\lceil m/2 \rceil + \lceil n/2 \rceil) $ である。偶奇で場合分けすると以下の通り:
- $ m $, $n$ がともに奇数のとき、許容値は $mn+3$
- $ m $, $n$ の片方が奇数・もう片方が偶数のとき、許容値は $mn+2$
- $ m $, $n$ がともに偶数のとき、許容値は $mn+1$
なお $ m $, $n$ がともに奇数のとき、外周でロスなく置くとループが発生するため、ペナルティ $1$ ロスが確定することに注意。
ペナルティいっぱいまで黒マスを詰めたときの残りを余裕値とよぶ。$\mod 6$ で場合分けして余裕値を求めると、以下のようになる:
色付きのところがロスが許されないケースである。なお緑のところは余裕値 $1$ だが、上で述べた奇数・奇数の外周ロスパターンに該当することに注意。
余裕値が正のケース
上記の表で余裕がある場合、外周でロスなく詰めたのち空中の部屋の構成を用いることで、四方壁でも構成可能である。
偶奇で場合分けして確認しておく。
ケースA-1:奇数・奇数 で余裕値 $2$ 以上
外周にロスなく詰めると、ループでの消費が $1$ あった上で空中に領域が残る。
奇数・奇数の空中領域で余裕が $1$ 以上あるときは黒マスの配置が可能なことが知られている。
ケースA-2:$\mod 6$ で $(5, 5)$
この場合、外周にロスなく詰めると、空中領域は打ち上げ花火以外詰められなくなってしまう。
なので外周で $1$ ロスを許容して汎用的な構成をする。
具体的には、以下のように規則的に構成するとよい。下のケースB-2に近い構成となる(詳細略):
ケースA-3:$\mod 6$ で $(1, 1)$
この場合も、外周にロスなく詰めると、空中領域は打ち上げ花火以外詰められなくなってしまう。
なので外周で $1$ ロスを許容して汎用的な構成をする。
具体的には、以下のように規則的に構成するとよい。下のケースB-3に近い構成となる(詳細略):
ケースB-1:偶数・奇数で余裕値 $2$ 以上
奇数辺にロスなく詰め、偶数辺には以下の図のように埋める。
空中の領域に、A面だけ(市松模様に塗って片側の色だけ)の黒マス構成を入れるとよい。
余裕値が $1$ の時は少しやっかい。具体的には $\mod 6$ で $(1, 2), (5, 4)$, およびその入れ替え。対称性から先の二つを解決する。
ケースB-2:$\mod 6$ で $(1, 2)$
以下 $(r, c)$ マスとは上から $r$ 行目・左から $c$ 列目のマスのこととする。
まず奇数辺をロスなく詰め、偶数辺は右に寄せて詰める。
そして、$(2, 3)$ マス, $(m - 1, 3)$ マスを黒にして、空中 $r+c$ が奇数のマスを一旦黒くする。
ここからしまつぶしをして構成する。
まず $5$ 行目の黒マスを先に左から消す。このとき、黒マスのナナメの連結は残す。
次に $5$ 列目を下から、$8$ 列目を上から ($7$ 行目から)、と消していき、これを $n-6$ 列目まで行う。ここも黒マスのナナメの連結は残す。
その後、$(8, n-3)$, $(11, n-4)$, ... $(m-5, n-3)$ と消していって、最後に $(m-4, n-4)$ を消す。
以上で、最後に消したところのみの $1$ ロスで構成できた。
ケースB-3:$\mod 6$ で $(5, 4)$
上のケースとほぼ同じ構成が使える。変えるのは最後のみ。
列で消すのを $n-8$ 列目までで止め、残りは $(8, n-5)$, $(8, n-3)$, $(11, n-6)$, $(11, n-4)$, ..., $(m-6, n-6), $(m - 6, n - 4)$ と消して、後は $(m - 4, n-4)$, $(m-3, n-5)$ を消す。
以上で、最後に消したところのみの $1$ ロスで構成できた。
ケースC:偶数・偶数
左上角、右下角に $2$ つ黒マスを入れ、それ以外の辺はロスなく詰める。
すると空中の部屋ができるので、ここに片面だけの黒マス構成を入れるとよい。
余裕値が $0$ のケース
上記の表で色付き=余裕がないケースでも、ほとんどの場合で構成可能と予想される。
実際、偶数・偶数である $\mod 6$ で $(2, 4)$ の場合は規則的に構成可能である。
ケースD:$\mod 6$ で $(2, 4)$
以下のような構成となる (詳細略)。$\mod 6$ で $2$ の方が長いか短いかによって微妙に変わることだけ注意。
しかし、偶数・奇数である $\mod 6$ で $(1, 4), (2, 5)$ のケースでは、一部で例外が存在する。
ケースE-1:$8\times (6t+5)$
全体のペナルティ許容値は $48t+42$ のため、余裕値 $0$ で黒マスが $16t+14$ 個入りそうだが、これは不可能である。
可能だとすると、上下辺の黒マス配置が確定する:
以下 $(r, c)$ マスとは上から $r$ 行目・左から $c$ 列目のマスのこととする。
ここで、$(3, 1)$ マスが白だとすると、ループを回避して以下のように黒マスが入るが・・・
この埋め方は不適である。このままループ回避を続けても示せるが、より汎用的な証明をしておく。
最後まで埋められたとして、$(4, 1)$ の黒マスからナナメにつながる黒マス全体を $B$ とおく。
このとき、$3$ 行目および$6$行目の黒マスについて、それぞれ左から見ていったときに、$B$ に属する黒マスと$B$ に属さない黒マスの境界が存在する。
なぜなら、境界が存在しないと右側にアースしてしまうからである。
すると、$3$ 行目 の境界にあたる白マスと $6$ 行目の境界にあたる白マスは中央部分を抜けて連結するはずである。
しかしこれらの白マスはそれぞれ (odd, even), (even, odd) というタイプのマスであり、中央を抜ける際に白マスループができない都合により、別タイプのマスにつながることができない。よって矛盾。
したがって、$(3, 1)$ は黒マスとなる。
対称性とループ禁により、以下のように配置が決まる:
しかしこうなると、残り $2\times 1$ の領域 $3t+2$ 個に黒マス $4t+2$ 個入れないといけなくなり矛盾。
よって $16t+14$ 個の黒マスは入らない。
なお黒マスを $1$ つ減らすと、余裕が $3$ 生まれるため、偶数・奇数パターンと同様に構成可能である。
ケースF-1:$10\times (6t+1)$, $t\geq 2$
全体のペナルティ許容値は $60t+12$ のため、余裕値 $0$ で黒マスが $20t+4$ 個入りそうだが、これは不可能である。
可能だとすると、上下辺の黒マス配置が確定し、さらに上のアースの議論込みで $3$, $8$ 行目まで決まる:
残る白マス部分に黒マスを $8t$ 個入れたい。
ここで以下のような分割を考える:
すると、$4$ 個ある赤の部分には $1$ 個、$2t-2$ 個ある青の部分には$2$ 個、$t$ 個ある緑の部分には $4$ 個までしか黒マスが入らない。
これで $8t$ 個に達するので、上限通りに入れるしかない。
特に緑の部分のそれぞれの上下マスが黒マスとなる:
さらに中央の $14$ 個からなる白マス部分に $6$ 個黒マスを入れる必要があるが、形状からここには $5$ 個しか入らない。よって矛盾。
したがって、$20t+4$ 個の黒マスは入らない。
こちらも黒マスを $1$ つ減らすと、余裕が $3$ 生まれるため、偶数・偶数パターンと同様に構成可能である。
ケースE-2:$\mod 6$ で $(2, 5)$, ただし長さが $11$ 以上
ここからは一般の場合で黒マスを構成する。
このケースの場合、以下のような規則性のある構成が可能である (詳細略):
構成のポイントは各辺から $3$ 行目の黒マスのつなげ方で、それぞれをどの長さのW型にするかを適切に決める必要がある。
上下はアース部分から $3, 3, \cdots , 2$ 個、左右は $2, 3, 3, \cdots , 2$ とする。
なお、中央部分の黒マスを波形で構成しているが、下のケースF-2のようにすべて右上->左下方向のナナメの黒マスでも構成可能。
ケースF-2:$\mod 6$ で $(4, 1)$, ただし長さが $13$ 以上
このケースの場合も、以下のような規則性のある構成が可能である (詳細略):
こちらも構成のポイントは各辺から $3$ 行目の黒マスのつなげ方。やはりそれぞれをどの長さのW型にするか適切に決める必要がある。
今回は上下はアース部分から $4, 3, 3, \cdots , 2$ 個、左右は $2, 3, 3, \cdots , 3$ とする。